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マニア台一期一会 第4回 『CR大激走学園M』(豊丸産業)
眩く甘美なマニア台の世界へようこそ
 新台入替の回数が年を追う毎に上がり続けているパチンコ・パチスロ市場。各メーカーから発表される新作の数は年間200タイトルを超え、その多くが半年も経たずに主力機種から外れていく。しかし、最近は1パチ・5スロやバラエティコーナーの浸透も手伝ってか、そうしたマイナー機種を打てる機会も増えた。そこでお届けする本稿は、題して「マニア台一期一会」。「良台」や「ダメ台」といったカテゴリを超越した「マニア台」に、一度きりの実戦を挑み、そこから何かを得たり得なかったりしようというコーナーである。
引くまで我慢、引いたらワッショイ
 「流行」。この2文字を皆さんは何と読むだろうか。おそらくだが、一番に挙がる読みは「りゅうこう」であろう。また、この2文字には当て字読みも存在する。「はやり」がそれだ。いずれの読みも意味は似たようなもので、ものや現象などが世に広まるということだが、そんなことはどうでもいい。今、私がここで書きたいのは、「流行」の第3の読み方、つまり「ながれ」についてである。この読みは人名を指す時以外はほぼ使われず、即ちそれは俳優の萩原流行を指すものだ。萩原流行と言えば日本を代表する名脇役の1人で、一見するとパチンコタイアップとは縁が無いようにも思えるが、出演者の1人として萩原流行を迎えた機種は存在する。それが今回取り上げる『CR大激走学園』である。
 『CR大激走学園』はいわゆる学園コメディもののオリジナル作品なのだが、登場キャラはアニメーションのみならず実写でも描かれており、主人公・ユウキは特撮作品などで知られる俳優・加々美正史が務めている。ヒロイン役にはグラビアタレントの木口亜矢。そして先生役として矢部美穂、萩原流行というキャスティングだ。ここで重要なのが、このタイアップ手法である。一般的に俳優やタレントを起用したタイアップ機というと、まずメインキャラクターを1人立て、そのキャラクターの関連エピソードや楽曲などを基にして演出をつくりあげていくのが一般的で、それはつまり「タレントありき」とも言えるが、本作の場合は根本的に異なり、パチンコのために書き下ろされた「大激走学園」という「物語ありき」なのだ。そのため、出演者たちはいわゆる「タイアップキャラアクター」ではなく、俳優として役柄を演じている。

 冒頭で触れた萩原流行ももちろんその1人で、俳優として演じることで萩原流行という人物の味わい深さが出ているのだった。これは紛れもなく「物語ありき」だからこそ実現したことで、それは『CR萩原流行』が想像しがたいことからも証明されると言えるだろう。
▲担任教師役として出演する萩原流行の衣裳はもちろんウェスタンルック
 前置きはこれぐらいにして、本題に移ろう。今回私が挑んだのはMAXタイプの『CR大激走学園M』である。シリーズ機種としては他に甘デジの『〜V』があり、設置は『〜V』の方が圧倒的に多いのだが、家の近所にあったのが『〜M』だったのでこちらにさせて貰った。まぁ、スペックこそ大きく異なるものの、ゲームの流れと演出は似たようなものなので気にしないで頂きたい。

 さて、ここからは機種概要に話を移したいのだが、まず本機はMAXタイプのマシンで80%という高い確変性能を有しながら、実質5ラウンドや実質7ラウンドなどの中途半端な大当たりや、いわゆるランクアップ型の大当たりを採用していないという特徴がある。アタッカーの位置や賞球に差こそあれ、出玉のある大当たりは全て14ラウンドをフルに消化することができるのだ。とは言え、そのままのスペックでは甘過ぎというもの。出玉のある大当たりが全て14ラウンドとなっている代わりに、本機は大当たりしても「大激走モード」に突入しない限り電チューサポートが付かないという仕様になっており、これによって他機種とは異なるゲーム性を実現しているのだった。
▲低確率中の大当たり振り分け(ヘソ&ステージチャッカー入賞時)
▲潜伏確変中の大当たり振り分け(ヘソ&ステージチャッカー入賞時)
 詳しい内部振り分けについては上の表を御覧頂きたいのだが、まず本機の場合は初当たりを引いてもほぼ電チューサポートが付かない。その確率は出玉のある大当たりを引いた場合の7%、つまり全体の5.6%しかないのだ。つまり、初当たり後は出玉の有無に関わらず高確率で潜伏確変になる。そして、この潜伏確変状態で出玉のある大当たりを引き、更にそのうちの34%、つまり全体の27.2%を引けば、目出度く大激走モード突入となる訳だ。ここまで来れば、あとは安心。大激走モード中は、100回転を超えた時点で電チューサポートが終了すれば内部非確変が確定、101回転目で「超激走モード」に移行すれば内部確変確定となるため、確変を捨てる心配はない。
 この一連のゲーム性を一言でまとめるならば「大激走モードを引くまで我慢、引いたらワッショイ」だが、これは既存のパチンコ機よりも、むしろパチスロ4号機時代の末期に人気を博した『島唄-30』や『南国育ち』といった沖スロに近いと言えるだろう。

 ただ残念なのは、プレイヤーが本機のポテンシャルを引き出しきることができなかった場合(より具体的な言葉に置き換えれば、大激走モードを引けずに連チャンが終わってしまった場合)、機種への評価が極端に下がってしまうということだ。何しろ、大当たりは連チャンしているのに1回あたりの出玉が少なく、大当たり間はじわじわと出玉が減っていくのである。しかも、いつヤメていいのか分からない。これでは、例え勝利を手にしたとしても「もうあの機種はいいよ…」となってしまうだろう。一方、一度大激走モードの快感を味わってしまうと、多くの者がその虜になってしまう。この両極端さ具合が『CR大激走学園M』をマニア台にさせているのだ。
▲大激走モード突入が確定する至福の瞬間。これを味わうためだけに本機を打つプレイヤーも少なくないはずだ
有名俳優を食うサブキャラの活躍を見よ!
▲「手紙予告」のダンゴは病的なほど「食」へのこだわりを見せる
 さて、ここからは本機の演出に話を移していこう。前述の通り、本機は学園コメディもののオリジナル作品で、実写映像が演出を盛り上げる。盛り上げると言っても「チャンスアップ時にカットイン」といった程度の使われ方ではなく、リーチそのものがフル実写という驚きのボリュームだ。多彩なキャラクターたちが暴れ回るのだが、その登場人物たちの個性には驚かされるばかりである。何人かここで紹介しよう。まず注目したいのは俳優の鈴木昌平が演じる「ダンゴ」で、彼はいわゆるデブキャラとして存在する。そのキャラ設定を際立たせているのが「手紙予告」で、ボタンPUSHでダンゴが登場した際のメッセージ内容はどれもズバ抜けている。いわく

 「カツ丼はおかずだ」「飯は味よりカロリーだ」「食い物をよこせ」

 デブキャラだからと言ってここまで徹する必要があるのかと感じざるを得ないが、まぁ、これはこれでいいのだろう。また、ダンゴに関して言えば、「激飲!牛乳飲み選手権リーチ」も大きな見所の1つだ。こちらは主人公のユウキが牛乳飲みキングのダンゴに挑むという設定のリーチアクションで、ダンゴが用意した牛乳をユウキが全て飲み干せば大当たりとなるのだが、ダンゴ登場シーンに気になってしまう要素が1点だけある。
 
 目が、赤い。
 
 宿敵として顔が大写しになる際、ハッキリと確認できるのだが、どう見てもダンゴの白目部分が赤いのだ。正直に告白すると、私はこの目を初めて見た際、チャンスアップパターンだと信じて疑わなかった。冷静に考えればそんな演出があるハズはないのだが、「白いはずの部分が赤くなっているのだから、これはアツいだろう」と思ってしまったのだ。だが、同じリーチを数回確認した後、思いは疑念へと変わった。

 「もしかして…ただの充血なんじゃないか?」

 何しろ、白目が普通に白くなっているパターンが皆無なのだ。チャンスアップなら、1度や2度は普通の白目が出てきて然るべきだろう。また、よく考えてみると、このリーチにおけるダンゴは牛乳飲みキングとしてユウキの前に立ちふさがるのみで、実際に牛乳を飲むのはユウキだけである。ダンゴの目が充血しているからといって勝敗を左右する訳がないのだった。
▲こちらが問題の充血シーン。チャンスアップではないので勘違いしないようにしたい。
▲ほぼ当たることがない「委員長の実験リーチ」。何度も見ていると眉間のシワさえ萌え対象となる
 
 さて、ダンゴ以外にも魅力的なサブキャラクターは数多く存在する。ここでもう1人取り上げるなら、やはりグラビアタレントの鎌田緑演ずるメガネっ娘キャラ「委員長」を無視する訳にはいかないだろう。

 本機に登場する女生徒キャラは彼女の他に木口亜矢演ずる「ゆい」とマヤ・リンデ演ずる「キャサリン」がおり、前者はヒロイン、後者はライバル役と位置づけが明確なのだが、委員長だけはそういった位置づけが無く、悪い言い方をしてしまえば中途半端なのだ。そして、ヒロインでもライバルでもないだけに通常時の出現頻度は高い。特に気になってしまうのが頻繁に発生する「委員長の実験リーチ」で、ほぼ当たることはないと言っても過言ではないほどのサムいアクションなのだが、出現頻度が高いだけにそれを見つめる時間は長く、最初のうちは「はいはい、また委員長の実験リーチね」程度にしか感じないものの、リーチを重ねるにつれて「この娘、結構可愛いんじゃないか?」に変わり、最終的には「委員長、結婚してくれ!」へと至ってしまうのだった。
 
 そして、委員長の実験リーチを散々ハズした後にやってくる彼女のハイライトが「変動開始カットイン予告」の委員長バージョンである。この予告は変動開始時に女生徒キャラがカットインした際の服装によって信頼度が変化するもので、制服姿や私服姿の場合はほぼ期待できないのだが、体操服なら一気に信頼度がアップするという特徴を持つ。しかも、キャラの種類は一切問われないため、委員長でも十分に大当たりが期待できるのだ。

 実際、私は体操服姿の委員長カットインから大当たりをゲットしたのだが、その際は「結婚した!俺は委員長と結婚したぞー!」と叫びそうになってしまった。このバランスを心得たキャラクター設定はマニア台プレイヤーには堪らないものがあるのだ。
▲変動開始時の体操服カットインは大チャンス。全身でなくバストアップなら更にアツい
常識を覆す怒涛の演出群がプレイヤーを襲う!
▲画面左からパイを持って現れるキャサリン。この後、主人公のユウキが被害を受ければリーチとなる
 
 以上のように本機は実写キャラクターの類い希なる個性が演出から溢れ出ており、いずれも注目せざるを得ないが、実写キャラ以外の側面に目を向けても「なんだこれは」と思わず唸らされる演出が多数存在する。中でも特に発生率が高く毎ゲームのように出現するのが「キャラ予告」で、こちらは画面左からライバルキャラが出現するというもの。そのまま左に戻って画面から消えた場合はハズレ、ライバルキャラが主人公に嫌がらせを行なえばリーチというアクションで、嫌がらせの種類は「パイを投げられる」「タライが落ちてくる」「爆発物を爆発させられる」など豊富なのだが、肝心の「何故主人公が嫌がらせを受けるとリーチなのか」という部分は全く語られていない。もしかしたら主人公がライバルに嫌がらせを受け、その逆襲としてスーパーリーチに至る、という設定があるのかもしれないが、プレイヤーの頭に刷り込まれるのは、「主人公が嫌がらせを受ける=リーチ」という1点のみで、そのため、画面左からライバルキャラが出現した際は「嫌がらせ、来い」と思ってしまいがちだ。主人公が酷い目に遭うのを待ち焦がれるというのもちょっと酷い話だが、演出の性質上、どうしてもそうなってしまうのだった。
 
 また、本機の演出においてもう1点注目したいものとして「保留予告」がある。こちらは液晶下部の保留増加時に、通常は青のメモリが他の色に変化すればチャンスアップというものだ。こう書くと他機種でもお馴染みのオーソドックスな保留先読み予告と思われるかもしれないが、そうではない。何しろ、この演出はチャンスアップとなる当該保留だけが変化するのではなく、点灯している保留全てが一斉に変化するのだ。このため、初見時は当惑しつつもハンドルから手を離し、数回転に渡って変動を見守ってしまったりする。だが、その期待は裏切られる場合が殆どだ。この演出におけるチャンスアップの対象となっているのは、「玉が入賞しメモリの色が変化した数回転後の変動」ではなく、「玉が入賞しメモリの色が変化した、まさにその瞬間に回っている変動」だからである。保留先読みと見せかけて実は違う、という演出は前代未聞と言えるのではないだろうか。
▲普段は青のメモリが変化すればチャンス。ただし、チャンスとなるのはその瞬間の変動だ
 
 さて、まとめに移る前に、本機の目玉機能である「大激走モード」についても触れておこう。上アタッカーが開放する「熱血ボーナス」終了後は、必ず「炎太の熱血チャンス」と呼ばれる演出が発生する。これは盤面右に存在する3つ穴回転体のGOゾーンに玉が入れば大激走モード突入確定というもので、その動きは非常にアナログ的でありパチンコプレイヤーの心をくすぐるものがあるのだが、前述した通り大激走モード突入の成否は大当たりの振り分けによって既に決められている。つまり、この演出はいわゆる出来レースなのだ。
▲最終ラウンドにはハッキリ「狙え」の文字が表示されるが、狙うべき場所はない
 
 だが、出来レースであることは当然ながら伏せられており、初打ちに際したプレイヤーはラウンド終了間際に困惑することとなる。何しろ、液晶画面にはハッキリとこう表示されるのだ。

 「回転体のGOゾーンを狙え!」

 狙えと言われたら打ち出さずにはいられないのがパチンコプレイヤーの性というもので、多くのプレイヤーがラウンド終了後もとりあえずハンドルを握ってしまうのだが、そもそも何処を狙って打ち出せばいいものか分からない。既にアタッカーは閉じているし、狙うべき羽根やチャッカーはどこにもないからだ。そうこうしているうちに回転体の動きは止まり、内部から1つの玉が出てくる。それがGOゾーンに収まれば結果オーライと言えるものの、ハズしてしまった場合は「今打ち出した分の玉、返してよ」と子供じみた憤りを覚えてしまうのだった。
 
 そして、GOゾーン入賞を果たしたならば、遂に電チューサポートの付く「大激走モード」がスタートする。同モードはスピードがウリで、仮に1回転目で大当りを引いた場合はわずか7秒という恐るべきスピードで絵柄が揃う仕組みなのだが、同モード中の液晶演出はなかなか凄い。

 ひたすら、学校の廊下を走っている。

 通常時に散々液晶を賑わせてきたキャラクターたちは絵柄の中に身を潜め、液晶にはプレイヤー目線でひたすら廊下を走る映像が映し出されるのだ。しかも、同モード中はリーチがノーマルのみになるという特徴があり、スーパーリーチの類は一切存在しないのである。私が子供の頃は学校で「廊下を走るな」とよく注意されたものだが、もし人間に「走ってはいけない廊下を全力で駆け抜けたい」という欲求が備わっているのだとしたら、大激走モードはその夢を最高の形で擬似体験させてくれる素晴らしいモードであると言えよう。
 
 この大激走モードはリーチこそノーマル限定であるものの、「標識予告」「爆発予告」「スベリ予告」とシンプルながら期待感を盛り上げる予告アクションが採用されている。その中でも特に見所と言えるのが「GEKIランプ予告」で、こちらは液晶左下の「GEKI!!」と書かれた箇所が静かに点灯すれば大当たり確定という一発告知予告だ。パチンコにおいても一発告知系の演出が搭載されるようになって久しいが、そのいずれもが「キュイン」音を始めとする高音を伴っており、発生時は周囲の注目を集めやすい。対して、この演出は静かにひっそりと点灯するものとなっており、それは某パチスロ機のオマージュであると言ってしまえばそれまでなものの、「周囲に覗き込まれることなく、自分1人で大当たりを察知したい」という需要には見事マッチしたもので、極めて高い中毒性を持っているのだった。

 通常時の「実写キャラを使用した盛りだくさんの演出」と、大激走モード中の「ひっそりと点灯するGEKIランプ」は対照的だが、その両極端さ具合は私を始めとするマニア台プレイヤーにとって心地良い。この演出バランスが全て計算されたものだとすれば、豊丸産業恐るべしである。
▲画面左下に注目。どこかで見たことがあるような色と形状だが、気にしないのが大人の対応だ
芸能タイアップ機の新たな地平
 芸能タイアップ機と呼ばれるものが当たり前のように存在するようになってから、既に長い年月が経過したが、それは一方で飽和寸前の状態にあり、象徴するかのように続編や「第○弾」が重ねられていく。もちろん私もそれを全面否定する気はないが、この行き止まり的な閉塞感を打破するためには、そろそろ1つの転換期が必要なのではないだろうかとも思う。そして、そのモデルケースとして『CR大激走学園』以上の適役はいまい。

 冒頭で失礼ながら述べたが、『CR萩原流行』はタイアップ機として想像しがたい。だが、それは萩原流行に魅力がないということではなく、その魅力が「俳優」という仕事に凝縮されているからであろう。同氏が出演したドラマがパチンコになる可能性はあっても、『CR萩原流行』があり得ないその理由はここにある。だが、豊丸産業は『CR大激走学園』で第3の道筋を示した。俳優にスポットを当てるのではなく、俳優が出演したドラマを取り上げるのでもなく、オリジナルの物語に俳優をのせるという方法論である。最近でこそオリジナルキャラクターがアニメ化されるなど、「作品の発信源」としての地位を高めているパチンコ業界だが、アニメ系分野を除けば未だ遅れをとっているのが現状だ。だが、『CR大激走学園』というエポックメイキングな作品は、この現状を覆す潮流の源となるだろう。芸能タイアップ機というジャンルを「作品の発信源」に変える新たな流行(ながれ)が、ここから始まっていくのである。
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