第4話より〜・・・・・・
この時、おやっさんと俺が・・・その後「霹」にハマりゆく事を知る由はなかった。
実際に勝負の現場を見られるチャンスが訪れるとは、俺には意外な展開だったが、
ここは願ってもないチャンスだ。
今日は、木曜。
明後日の見学に備えて、明日はおやっさんと作戦会議の約束をした。
「そういえば、おやっさんは前に見に行ったと言っていたなぁ」
俺をこの勝負に誘う前に「見てきた」と言っていた事を思い出した。
「まあ、明日聞けばいいか」
最近、そっちの事ばかりで頭が一杯になり、普通に打ってないと思い、ホールに顔を
出す。おやっさんは、仕事があるから今日は打たないと言っていた。
俺は、ホールを何度か回って、俺達以外の常連の顔を確認した。
「うちのホールでは、誰も知らないんだろうなあ。そんな勝負のことなんて・・・・」
ふと思った事だ。
平和と言えば平和なホールだ。
俺の行っているホールは、昔ながらのホールで、まだ最新の設備なんかは導入されて
いない。
チェーン店に行けば、最新台は打てるし、勝負に集中できるのかもしれないが、
イマイチ行く気がおこらない。
ハイテクな大きなチェーン店のホールは、もちろん箱は無いし、各台の間は衝立で
仕切られていて、人とのふれあいなんて全く無い。
ふれあいを求めてギャンブルしている人は少ないから良いのかも知れないが、俺は、
お隣さんの台の状況も見えちゃうってか、覗いちゃうんでね。
たまに、見られた奴に喧嘩を売られる事もあったよ。見られたくないなら、衝立付きの
最新ホールに行けよって。
まあ、そんな事もあるが、昔っぽい所が、今のホールの好きな所かもしれない。
昔のパチンコホール事情は、ネットで読んだ事がある。
現在のパチンコ業界は、「カクバングループ」の一人勝ちではないだろうか。
この時代に新規の店舗のオープン、生き残りを賭けた勝負に出ている企業としては、
俺も認めている。
カジノより先に、アミューズメントとの融合を行い、パチンコの悪いイメージを
変えようとしていたし、今も総合施設を目指して展開を行っている。
「カジノに負けない庶民のミカタ」をキャッチフレーズにがんばっている。
小さなホールグループは、未だ合併や廃業に追い込まれる状況だ。
そんな中でも生き残りを必死にやっているホールの方に、ついつい足を運んでしまう。
今の時代は、いろいろと発達してしまったのか、人と人とのふれあいなんて少なくなってきたような気がする。
税金が上がり、貧困の差は開く一方で止まらない。
2000年始めからの経済状況の悪化が、未だに回復する兆しは、まだ見えていない。
カジノがその兆しを見せない経済状況の中、僅かな光を見出して来ている事は、
冒頭に触れたが社会貧困格差は、まだまだ、見えない所で無くなっていない。
そんな日本の今、経済危機の中に生きている俺達は、一体何に向かっているのだろうか?
何の為に生きているのだろう?
俺は、一度しかない無い人生を後悔したくは無い。
だから、ギャンブルか?と言われるとそれは違うと思うが、毎月決まった額しか入って
来ない。入って来ない物は、仕方が無い。それでやりくりして生きて行くのが普通だよ。
でも、もう、出会ってしまってるんだよね。
リスクを背負ってでも、その勝負に掛ける生き方に溺れているのかもしれない。
ギャンブルに依存しているのかも知れない。
何でもハマっていれば依存でしょ?
それが、俺の場合はパチンコだったのかも知れない。
良いんじゃないの? そう言う生き方も。
負ければ地獄を見て、勝てば天国を見る。
他人に迷惑を掛けなければ、そう言う生き方もあるのではないだろうか?
俺は、自分の生き方を今から変えようとは思わない。
戻ろうとも思わないし、辞めようとも思わない。
今は、霹の事しか考えられないから。
金曜の夜が来た。
おやっさんとの作戦会議だ。
作戦と言っても、実際に見ていない俺には何を話し合えば良いのか?解らなかったが、
その時、おやっさんは一度見ている話をしてくれた。
「どんな奴がその勝負をしているか?俺の掴んでいた情報から会社近くの蒲田の
ホールでそれをやってる奴らを見つけたんだよ。」
「蒲田ですか?」
おやっさんの会社は大森と名刺に書いてあった事を思い出した。
「俺も最初は、こんな事はあるのかと疑ってた。けどよぅ、いたよ。実際にあった
んだな。こんな勝負をしている連中が」
おやっさんも最初は、霹の存在を信じていなかった。疑っていたようだ。
それもそうだろう。ただ、毎日、普通のパチンコをしている俺達だから、そんな勝負が
存在する事など思っても見ない現実を目の辺りにしたのだから。
「その時は、二対二だったな。山路の話もそうだが、もしかしたら、これが霹の
オーソドックスなスタイルなのかも知れない。勝負始まっていたので、どう言う合図で
始まるのか?が解らなかったんだが、奴らの周りを見ていたら少しわかった事がある。
どういう方法で霹が行われているかが・・・多分・・・」
確かに霹をやる相手がホールでどうしているかが解らなければ、勝負のしようが無い。
相手を見つけられなければ、勝負は始まらない。
「霹をやる奴らは・・・・・」
「やる奴らは?」
「みんな、合図を送っている」
「合図?」
「これは、俺の勘違いかもしれないけど、霹の記号、おそらく奴らは、あの記号を
どこかしらにつけて周りに発信しているよ」
「記号?・・・ですか」
おさっさんが『記号』と言うマークの事を説明してくれた。
俗にいう稲妻が二本あって、その稲妻がクロスされている。クロスされた稲妻の後ろに
ハートの図が描かれていたと言う・・・その記号を、彼らは合図にしていたようだ。
その合図の示し方は様々で、携帯電話の待ち受け画像や背面に書いたりしている者、
アクセサリーにして指輪やネックレスにしている者もいるかもしれないだろう。
合図の送り方は、場所と人それぞれ違うと言う訳だ。
「そう言えば、山路さんがしていたネックレスの形。そんなマークだったような
気がします」
俺は一瞬だが思い出した。
「そうか?俺は、そこまで見えなかったけどな。あいつもやっているからそうだろうな。
とにかく明日、何処まで探れるか解らんが、隅々まで見てやろうじゃないか」
おやっさんの観察力は凄い。
今回の件は若干無謀と言う点もあるが、知りたくなった事は意地でもつきとめる
執念みたいな部分は、日頃の勝負でも感じる所がある。
おやっさんぐらいの歳にもなれば、今の複雑なパチンコ機の仕様など、俺でも覚えるだけでも精一杯なのに、好奇心と言うか聞いてきてもちゃんと覚えているのがこのおやっさんだから。
そういった部分から、今回も自分が興味を示した霹の勝負の情報から、一人で潜入捜査
って訳だ。
これで、おやっさんが過去に見た霹の話がわかった。
「勝負を最後まで見たかったんだけどな。ちょっと、周りの何か嫌な視線を感じな
・・・その日は、その記号だけ確認して帰ったんだ。」
「そりゃ危険ですよ。何がどうなっているか?解らない状態の所にいってるんですから」
さっきも言ったように無謀過ぎるんだから、このおっさんは。
「作戦って訳じゃないんだが、何個か気になる所があってな。それをお前に確認して
欲しいだ」
「気になる所ですか?」
「ああ、俺が感じた周りの視線だよ。多分、ホーム側の奴らは、何か仕込んでるじゃないかな」
仕込みとは一体何だろう。
「ただ勝負してるんじゃないだろうと思ってな。金が掛かってる訳だし、勝負中は相手の不正にも気を配れない。短時間で相手の情報も入ってくるはずないし、そうなると、
ホーム側には味方が必要だと思っている。」
「そこを俺に調べろと?」
「ああ、周りの人間を観察しろって事だよ」
なるほど、ただ勝負している人間だけじゃなくそこに関る人間もいるはずだと、
おやっさんは感じた訳だ。
「確かに、初めて会う人と勝負する事になるにしろ、相手の素性も解らない訳で、
今解ってる状態だと合図一つで行われるこの勝負はいろいろと危険すぎやしないか?
と言う事ですね」
「ああ、だからこないだ俺が感じた視線の先が合っていれば、そういう人間もいるんじゃないかという訳だよ」
ホール側自体は、場代が入ればそれで良いが、実際に勝負を行う側にはリスクが
大きすぎる。
第一、相手の情報が100%では無い事も考えると、危険が多すぎるはずだ。
「これは、明日!忙しくなりそうですね」
「まあ、とにかく明日!明日解るだろう」
次回、第6話_________________________________
我が自己満!魂w
中々、続きが書けなくてダメ男!でしたが〜前のも読み直しながら書いてましたよ。
多分、第6話も早めにあげられると思います。
ワードで20ページぐらいになってたよw