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マニア台一期一会 第1回 『CRアン・ルイスと魔法の王国H-T』(ニューギン)
眩く甘美なマニア台の世界へようこそ
 新台入替の回数が年を追う毎に上がり続けているパチンコ・パチスロ市場。各メーカーから発表される新作の数は年間200タイトルを超え、その多くが半年も経たずに主力機種から外れていく。しかし、最近は1パチ・5スロやバラエティコーナーの浸透も手伝ってか、そうしたマイナー機種を打てる機会も増えた。そこでお届けする本稿は、題して「マニア台一期一会」。「良台」や「ダメ台」といったカテゴリを超越した「マニア台」に、一度きりの実戦を挑み、そこから何かを得たり得なかったりしようというコーナーである。
マイナー台の中でも特に強い個性を放つ「マニア台」
 さて、これから連載「マニア台一期一会」を始めるにあたって、まえがきのようなものを記そう。まず語るべきは「マニア台」の定義という事になろうかと思うが、私はここでパチンコ・パチスロ機を2つのカテゴリに分けたい。すなわち「メジャー台」と「マイナー台」だ。

 何万台からがメジャーで何万台からがマイナー、と線引きをすることは難しいが、ニューギンの機種で言えばメジャーには『CR花の慶次』シリーズが入るだろう。一方のマイナー側代表は『CRじゃぶじゃぶビート』だろうか。いずれも名機だが、ホールにおける存在感は全く異なると言っていい。

 このマイナー側、つまり『CRじゃぶじゃぶビート』側には、個性的な機種が少なくない。メジャーの資質を備えていながら、あまりに個性が強すぎるためにマイナー機となっている例が非常に多いのだ。そして、その中でも特に強い個性を持ち、マイナー機でありながら一部のファンを熱狂させているものが本稿で照準を合わせる「マニア台」なのである。前例に漏れず、ニューギンの機種を挙げよう。第1回のピックアップ機種は『CRアン・ルイスと魔法の王国H-T』である。
「アン・ルイス」と「魔法の王国」の割合は約2:98
 
 本題に入る前に、まずは基本性能について触れておこう。本機は2007年9月に登場した、大当たり確率314.75分の1のミドルタイプ。確変突入率は60%だが、下のグラフの通り、ヘソ入賞時は突確の割合が26%と高めに設定されており、その代わり、電チュー入賞時は突確の振り分けが存在しない。

 2009年春現在では、ヘソと電チューでラウンド振り分けを変える仕様はお馴染みになったが、本機が登場した2007年夏当時としてはまだ新しい試みだったのだ。

 そして、注目して頂きたいのが一番右のグラフ。こちらは本機における「アン・ルイス」と「魔法の王国」の割合を個人的な体感値からグラフ化したものである。タイトルの通り、本機はロックシンガーであるアン・ルイスとのタイアップ機だが、機種名は『CRアン・ルイス』ではなく『〜と魔法の王国』と後ろに言葉が付いている。つまり、この機種は「アン・ルイス」的要素と「魔法の王国」的要素が組み合わさって構成されているのである。
▲大当たりの割合(ヘソ入賞時)
 
▲大当たりの割合(電チュー入賞時)
 
▲アン・ルイスと魔法の王国の割合
 
▲通常時は魔法少女・アンの修行と戦いが描かれる。
 ニューギンといえば、かつて泉谷しげるを座頭市に仕立て上げた実績を持つメーカーであり、こういった手法の大胆さというかフリーダムぶりでは他メーカーの追随を許さないが、それにしても「魔法の王国」は応用性が高く便利な言葉だ。どんな機種でも名前の終わりに「〜と魔法の王国」と付けるだけで全く違う雰囲気をもったマシンになってしまう。想像して欲しい。

 『CR加山雄三〜海とエレキと魔法の王国〜』

 魔法の王国の前では若大将も形無しである。さて、話を戻そう。先に御覧頂いた通り、本機における「アン・ルイス」と「魔法の王国」の割合は2:98と大きな差が付く結果になった。というのも、本機の通常時は魔法少女・アンの魔法修行を軸に描かれており、アン・ルイスが登場するのは「実写カットイン予告」や「コンサートリーチ」、7絵柄での大当たり時、ジャンプアップボーナス発生時、確変確定の「アン・ルイスモード」滞在中など限られているからだ。これにタイトルを付けるなら『CR魔法の王国とアン・ルイス』にした方が良いような気もしてくるが、主役だからこそ登場機会が少ないとも言えよう。
 
 この割合により、実写カットイン予告などの発生時は、画面に映し出された人物が何者なのか判別できないという障害が生じる。「魔法の王国」的な世界にどっぷりと浸かった状態で、突然アン・ルイスの実写映像を見せつけられ、ようやく「あぁ、そういえば、アン・ルイスの台だった」と思い出すことになるのだ。また、本機はニューギンの台ということでモード移行システムを採用しているのだが、その名前が凄い。何しろ確変期待度が最も高いモードが「六本木タイム」だ。その他は「5方陣モード」「6方陣モード」「マジカルチャンス」と、いずれも「魔法の王国」らしさに溢れた名称のモードが用意されているのだが、そこからの移行先である最上位モードが何故か「六本木タイム」なのである。アン・ルイスの代表曲である「六本木心中」から取ったのだろうということは理解できるのだが、それでも「六本木タイム」はないんじゃないかと感じるのは、おそらく「六本木」と「魔法の王国」があまりに不釣り合いだからだろう。だからといって「心中タイム」ではもっとマズいことになるのだった。
▲確変期待度が高いのは良いが、ネーミングはなんとかならなかったのか。
打ち手を置き去りにして突っ走る狂気のテンション
▲通常時はリーチの成否に関わらず、魔法少女・アンが叫びまくる。
 
 さて、本機のマニア台ぶりを語る上で欠かすことのできない大事な要素の1つに、通常時の賑やかさがある。文章のみで表現するのが非常に困難なのが残念だが、本機の賑やかさは単なる「賑やか」を超えた、非常に香ばしいものなのだ。

 例を挙げて説明しよう。通常時に頻繁に発生する演出の1つに「アン・ステップアップ予告」というものがある。これは先述した魔法少女・アンが、液晶上にある魔方陣に精霊を召還し、さらに覚醒させることができれば完成形というものなのだが、アンが1アクション起こすたびに「召還!」「超召還!」「覚醒!」「超覚醒!」などと叫ぶのである。ここで重要なのは「喋っている」ではなく「叫んでいる」という点で、魔法少女が叫んでいるだけに、やたらと元気がいい。わかりやすい言葉で書けば、ハイテンションなのである。このハイテンション加減がアツさと連動していればまた違う印象を受けるのだろうだが、本機種の場合は違う。全く期待できない予告が連発し、リーチにすらならなくてもアンは叫び続けるのだ。
 
 具体例を挙げよう。擬似2変動開始→アン「召還!」→魔方陣の中に眠っている精霊が登場→アン「超覚醒!」→Wラインテンパイ→覚醒ならず。ここまでの予告内容で、ノーマルリーチ止まりである。いや、擬似2がノーマル止まりの台は数多くあるし、ノーマル止まりであることそのものは良しとしよう。問題なのは、そのノーマルリーチの変動時間だ。

 2秒。

 長く見積もっても3秒は無かったように思う。本当に一瞬だ。擬似連も含めて考えると、変動開始からノーマルリーチが始まるまでの時間は数十秒あったはずだが、それがたったの2秒で終わる。「スーパーに発展するか否か…」という分かれ目が訪れるよりも遙かに早く、中絵柄が無慈悲に停止するのだ。テンションの高い魔法少女が「超」を付けた言葉を叫んだ結果が、2秒で停止するノーマルリーチなのである。
▲本機の役モノは振り子。最大3本だが、2本ではリーチにすらならない。
▲「属性エフェクト予告」は見た目に派手だが、大抵は何も起こらない。
 
 また、もう1つ注目したいのが「属性エフェクト予告」だ。これは画面内が保留アイコンに対応した変化を起こすというもので、一例としてはアイコンがマーメイドなら大津波が画面を覆う。

 ハッキリ言って本機で発生する予告アクションの中では非常に高いインパクトを持つアクションなのだが、実はこの予告は「リーチになればチャンス」というもので、実際は発生してもほとんどリーチにはならない。見た目が派手なだけに、初見時は「これはアツいだろう」と感じるのだが、リーチにすらならずに終わるのである。
 
 そして、アイコンといえば忘れてはならないのが、保留消化時の意味不明なアクションである。本機でヘソ入賞に対応している保留アイコンは、ドラゴン・ペガサス・ミノタウロス・マーメイドの4種類が存在するのだが、そのいずれもが保留消化時に後列(残りの保留)に対して何らかの嫌がらせを行なうのだ。ドラゴンは火を吐いて後ろのドラゴンを黒コゲにし、ペガサスは竜巻を起こして続くペガサスの目を回す。同時に出現するフキダシに書かれた台詞で信頼度を示唆しているので、一応は予告の一種なのだろうが、嫌がらせを行なう意味が不明だ。そして、ここで特筆すべきはマーメイドの嫌がらせアクションである。

 後列に、水をかける。

 手で目の前の水をすくい上げるようにして、バシャッと水をかけるのだ。いや、もしかしたら魔法の力で水流なり津波なりを起こしているという設定なのかもしれないが、水をかけているようにしかみえない。その他の精霊たちが起こすアクションと比べるとどうにも地味な印象が否めないが、困ったことにこのアクションは毎変動発生し、プレイヤーを慣れさせる。慣れというのは恐ろしいもので、うっかり長時間打っていると「笑顔で後列に水をかけるマーメイド萌え」といった感想を抱きかねないのだ。
▲水をかけるマーメイド。小学生か。
 
 以上のように、本機の予告アクションは「ハイテンション」と「意味不明さ」を核にして構成されており、慣れるまではプレイヤー側のテンションと機械側のテンションとの間にどうしても差が生じる。プレイヤーは台の世界観に馴染もうと自ら歩み寄っているのだが、「魔法の王国」の類い希なる個性がそれを拒むのだ。そうなると、もう為す術はない。「ずっとニューギンのターン」である。打ち手は放置プレイのように置き去りにされ、「超召還!」「超覚醒!」と叫び続ける液晶をただぼんやりと見つめる事しかできないのだ。

 だが、私をはじめとする一部のマニア台打ちにとって、放置プレイは苦にならない。むしろ、「置き去りにされてる感」が高まるほど快感は増していくのである。
忘れてましたが主役はアン・ルイスです
▲実写カットインは色々な意味でインパクト絶大。
 
 さて、ここまでは「魔法の王国」にスポットを当てて本機を解説してきたが、ここからは真の主役である「アン・ルイス」に注目していこう。前述の通り、本機における演出の98%は「魔法の王国」で構成されているため、針が残りの2%である「アン・ルイス」側に振れた時は相応のチャンスが待っている。その中でも大当たりに直接絡んでくるのが「実写カットイン予告」と「コンサートリーチ」だ。

 前者はその名の通りアン・ルイスの実写がカットインして高信頼度を示唆するというもので、発生タイミングはリーチ成立直後&中絵柄最終停止直前となっているのだが、実写だけにそのインパクトは絶大で、プレイヤーは強制的に「魔法の王国」側から「アン・ルイス」側へと連れて行かれる。そのため、うっかりすると時差ボケのように「この女の人は、誰ですか?」といった反応をしてしまいがちだ。その変動が当たれば時差ボケも解消されるだろうが、ハズれた場合は目もあてられない。実際、自分の場合は「魔法の王国」側に滞在している時間が長すぎて何の機種を打っているのかすら分からなくなっていたせいか、「なんか凄い化粧をした女の人が出てきて、ハズれた」としか感じなかったのだ。
 
対する後者は3DCGでアン・ルイスのコンサートが展開し、それに合わせて絵柄が変動していくという内容で、ドーム型の会場を舞台にアン・ルイスが「六本木心中」を熱唱する。本機に用意されたリーチの中では最も信頼度が高いのだが、このアクションで当たった場合、「今までの魔法云々は一体なんだったんだよ」という話になるのが残念で、私にとってはその残念さが心地良い。『慶次』で例えるなら、「キセル予告やらストーリーリーチやらを散々ハズしまくったあげく、結局はいきなり戦で当たる」といった所だろうか。
▲3DCGで描かれたアン・ルイス。
▲歌う。その発想はなかった。
▲こちらは「あゝ無情」より。ケバさがいいかどうかは各人の判断にお任せしたい。
 
 そして、大当たりラウンド中の演出は揃った絵柄によって異なるものの、確変確定の7絵柄で大当たりした場合はやはりアン・ルイスが登場する。しかも、楽曲を選べるという嬉しい仕様だ。曲は「六本木心中」「あゝ無情」「グッド・バイ・マイ・ラブ」「WOMAN」「女はそれを我慢できない」「LUV-YA」の6曲で、今回の実戦で私は「WOMAN」をチョイスした。私事で恐縮だが、幼少の頃、10歳離れた兄の部屋からこの曲がよく流れてきたのを思い出したのである。親切なことに、画面下部には歌詞が表示され、「こんな歌だったのか」と私を驚かせた。

 「あなたと踊ったドレス 冬の海へと流しに来た」

 加山雄三やC.W.ニコルに聞かれたら「海に物を棄てるんじゃない」と怒られるんじゃないかと余計な心配をさせるが、やはり想像してしまうのはドレスを遺棄するためにわざわざ海へと足を運ぶアン・ルイスの姿で、それは詞にしてしまえば叙情的と言えるものの、絵としては非常にアレなのだった。
 
 それにしても、問題にすべきはこれが本当にロックなのかということだ。舞台になっているのは「冬の海」であり、アン・ルイスは「ドレスを流す」のである。「冬の海」というからには、都市部などもってのほかで、少なくとも太平洋側ではないだろう。港では漁船が魚を揚げ、あたりは雪で白く染まっている。そんな中、アン・ルイスはドレスを流すのだ。これはロックというよりも、むしろ演歌の世界なのではないだろうか。余計なお世話かもしれないが、「WOMAN」を聞きながら、そんなことを感じてしまったのだった。
演出過剰の果てに何が見えるか
 
 「最近のパチンコ機は演出過剰だ」という論調を見かけることがある。液晶機の黎明期までは、現在のスーパーリーチよりも遙かに信頼度の高いノーマルリーチがあったのだから、古くからパチンコを打っているファンが失望するのも理解できる話だ。実際、私も長いだけのダラダラとしたアクションには辟易する事が少なくない。

 だが、演出過剰も度を超すと、そこに新たな価値が生まれる。「演出があまりに鬱陶しすぎて、逆に気持ちよくなってきちゃった」という状態だ。『CRアン・ルイスと魔法の王国H-T』は、そんなトランス状態をプレイヤーに提供してくれる、マニア台の中でも貴重な存在なのである。

 2009年春現在、既にホールの主力機種からは外されてしまった同機。だが、1パチやバラエティコーナーが普及した今、全国各地で未だ現役稼働中である。マニア台好きならずとも、是非一度はプレイし、魔法少女・アンのハイテンションぶりを堪能してみて欲しい。

(C)アン・ルイス
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