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名機列伝〜第2章〜 アルゼ『大花火』
パチスロ界にブームと革命を巻き起こした2代目花火伝説
 古きものが新しいものに淘汰されるのは自然の摂理である。このパチンコ・パチスロ業界においても1930年ごろにパチンコが誕生して以来、毎年多くのパチンコ・パチスロ機が世に送り出されては消えていっている。ファンの記憶の片隅に残ればまだマシで、多くの機種は存在した少しの記録が残っているばかり…。だが、その消えていく数多の機種の中でごく一握り、特別な機種が存在する。人々の記憶の中でいつまでも色褪せることなく生き続ける機種、後世の機種に多大な影響…遺伝子を遺した機種、パチンコ・パチスロ業界を越えて社会現象を巻き起こした機種、そして時には打ち手の人生を変えてしまうほどの魔力を持った機種…そんな「名機」たちがパチンコ・パチスロ界の流れを作ってきたのだ。本企画は、そんなパチンコ・パチスロの名機たちの伝説を記録したものである。
BIGが怖いと思ったことがありますか?
 「イップス」というものをご存知でしょうか?

 スポーツ選手などが精神的な理由で体が思うように動かなくなって失敗するアレです。ま、実は自分もあんまりよくわかってないので、ここはてきとーに「アレ」とかいう都合の良い言葉で濁していますが…。

 さて、明らかに運動に向かない体型をしている自分が、急にこのようなお話から始めたかと言うと…、実は1時期この症状を体験したことがあるからです。そう、それはスポーツではなく、パチスロで!

 そんなありがたくはないけど貴重な体験をさせていただいた機種が、今回取り上げる『大花火』。リアルに「あわばばばわわわわ…」とストップボタンを押せなくなったのは、後にも先にもこの機種だけですわ。今回は、そのように今もなお人々の記憶に残り、数々の記録を作った偉大な機種の伝説を紐解いていきましょう。
最初にして最高のA-700タイプ!
 まずは名機『大花火』の基本的なゲーム性について解説していこう。当時はいわゆるノーマルAタイプが主流で、本機も多分に漏れずBIGとREGという2種類のボーナスだけでコインを獲得していくオーソドックスなゲーム性であった。ただし、それまでの機種と一線を画したのは、BIGの最大獲得枚数は711枚という、業界初となるA-700タイプのマシンとして登場した点だ。

 BIG中は約1.2分の1で15枚役が成立しており、4thリールに赤ドンちゃんが表示されたゲームは左リールに3連ドンちゃんを狙えば簡単に獲得できる。ただし、JACインフラグ(4thリールに青ドンちゃん停止)も約6分の1で成立しており、リプレイハズシを駆使して3回目のJACイン入賞をいかに遅らせることができるかがポイントとなった。

 というのも、たとえば、1回もリプレイハズシを行なわずに残り20ゲームで3回目のJACインが成立したときのケースで考えると、そのままJACインさせた場合の獲得枚数は483枚、その後に1回もJACインフラグを引かずにパンクをしてしまった場合の獲得枚数が584枚と、早いJACインよりもパンクしたときのほうが得になるのだ。もちろん、パンクせずに残り7ゲームでJACインすれば624枚、残り6ゲームなら636枚…、そして最終ゲームにJACイン入賞なら696枚と、3回目のJACイン入賞が遅ければ遅いほど大幅な獲得枚数増が期待できる仕組みだった。とは言え、そのままJACインを引けずにパンクしてしまう可能性もあり、なるべく遅いゲームにJACインしてほしいと思いながらも、残りゲーム数が少なくなると今度はパンクに怯えながらの消化となったものだ。
 そのリプレイハズシの方法が目押しレベルに合わせて2種類存在したのも特筆すべき点だろう。JACイン成立時は、中・右から停止させると中段にリプレイがテンパイするので、左リール中段にBARをビタ押しすればJACインの入賞を100%回避できるビタハズシと、逆押しで3連ドンちゃんを狙えば75%の確率で回避できるアシストハズシが存在した。ビタ押し使用時は平均610枚オーバー、アシストハズシ使用でも平均約580枚というそれまでのAタイプとは明らかに一線を画す獲得枚数、15枚が揃いまくるスピード感・爽快感は、A−400タイプに慣れ親しんでいた多くの打ち手を魅了するには十分だった。

 なお、当時の主力技術介入と言えば、リプレイハズシ、小役狙い、設定判別の3つだったが、小役カウンタ非搭載だったため通常時の小役狙いも非常に有効だった。設定判別に関しては、小役確率には設定差はなかったものの、設定6のBIG確率は当時の最高水準である240分の1であったのに対し、設定1では431.1分の1と当時でも珍しい400分の1を下回る低い確率と、参考にするには十分な設定差が存在し、半日も打てば設定の高低を判断することが可能だった。なお、スペック的には技術介入を完璧に行なえば設定1でも機械割が100%を超える「甘い機種」で、設定6に関してはなんと140%という破格の高スペックを誇っていたのも特徴である。

 また、演出面から見ても、本機は当時の最先端技術と流行の機能を集結した革新的機種であった。それまでの機種がリーチ目メインだったのに対し、本機はアルゼとしては初、他メーカーを含めても当時では最大サイズの演出用4thリール「鉢巻リール」を搭載しており、それが花火から受け継がれたリールフラッシュやレバー音、出目などと絡み合って飽きの来ないゲーム性を実現させていた。この完成度の高い演出も息の長い人気を誇った要因の1つだったと考えられる。
初級者から上級者まで支持された完成されたゲーム性
 そんな名機『大花火』が世に送り出されたのは、今から約10年も前。ノストラダムスの予言ナビが見事にはずれ、西暦がいよいよ2000年代に突入するということで世間はミレニアムへのカウントダウンで浮かれまくっていた1999年12月。パチスロ界では暦よりも一足先に新時代の幕開けを告げるかのように降臨したのだ。

 さて、名機と呼ばれる機種は、何の予兆もなく突然変異のように生まれ、徐々にその魅力で人々の心を虜にして設置台数を伸ばし大ヒットする機種になる場合が多い。だが、この『大花火』はそのパターンには当てはまらない。当時のアルゼ(ユニバーサル販売)からは数々の名機が輩出されており、それらの名機たちによって本機を成功に導く土壌が作られていたのだ。

 名機『クランキーコンドル』が小役狙い・リプレイハズシという2大攻略要素を世に広めて1億総スロプロ化現象と言える程の技術介入ブームを起こし、その流れを引き継いだ『サンダーV』が3連絵柄とリールフラッシュを浸透させ、更に進化して誕生した『花火』が「ドンちゃん」というパチスロ界屈指の名キャラクターを生み出した。そして、大量獲得タイプという時代を切り拓いた『ビーマックス』という存在。それら優秀な遺伝子を引き継いで生まれたのが、この『大花火』なのである。そう、一見すると『花火』の後継機ではあるが、花火だけではなく多くの名機の遺伝子を受け継いだ、アルゼ遺伝子の結晶と言える機種なのである。
<クランキーコンドル>
1995年にユニバーサル販売から登場した伝説の名機。リプレイハズシはこの機種なしでは語ることができない。
<ビーマックス>
1998年に登場したアルゼ系初の大量獲得機。リプレイハズシ使用時は平均約550枚、MAX681枚を誇る。
 ただし、本機はそんな七光りのおかげでヒットしたわけではない。むしろ、この業界に限らず、得てして2代目や後継作というものは、「大成功はしない」というジンクスがあり、妨げにすらなりうるもの。なぜなら、どうしても偉大な先代たちと比較されて過剰な期待がかけられているため、たとえそれ自体の出来は悪くないとしても、失望されて勝手に「失敗作」の烙印を押されてしまうからだ。

 『大花火』も「あの『ハナビ』に続編が出る」「『ビーマックス』を超える大量獲得タイプらしい」と導入直前から大きな期待をかけられていた。それも噂先行と言われてもおかしくないほどに…だ。きっと、「良機」程度の機種だったら、その期待感に押し潰されていたのではないだろうか。だが、『大花火』は後に「名機」と呼ばれる機種。見事に、その期待に応えられるだけのポテンシャルを秘めていた。名機たちのファンを瞬く間に取り込み、どのお店でも開店時に真っ先に席が埋まるほどの人気機種となった。もし『ハナビ』やその他の偉大な機種がこの世に存在しなかったとしても、程なく頭角を現していたに違いない。

 瞬く間にトップ機種に上り詰めたこの2代目花火だが、全く問題がなかったわけではない。やはり、打ち手の間で取り沙汰されたのは、ハマリの深さだ。当時のBIG確率は、設定1でも300分の1程度の機種がほとんどで、ビーマックスですら1/399と400分の1以内に抑えられていた。それをはるかに超える設定1の431分の1という確率は、少しヒキが悪ければ1時間以上BIGが引けないことなどザラで、千ハマリも決して珍しくない。打ち手に警戒心を与えるには十分な確率だった。
 しかし、打ち手側は程なくこの確率を受け入れることとなる。なぜなら、『大花火』にはハマリのリスクを負うだけの価値があったからだ。設定6の機械割140%と言えば、8000ゲーム以上回せば1万枚近いコイン獲得が期待できる夢ようなのスペック。また、何よりも設定1でも完璧に技術介入を行なえば機械割100%を超える…いわゆる「勝てる機種」というのが大きい。打ち手側は「もしかしたら設定6が入っているかもしれない。たとえ設定1だったとしても機械割100%を超えているから大丈夫」と考え、「甘くておいしい機種」という意識が植え付けられたのだ。それに、約600枚を獲得できれば380ゲーム近く回すことが可能なため、手持ちのコインで遊技している際はそれほど気にならなかったというのもあったろう。

 演出・筐体面でも、鉢巻リールに抵抗を覚えた人は少なくなかった。というのも、先代の『花火』は様々な花火の動きをリールフラッシュで見事に再現し、風流かつどことなくコミカルなアクションで打ち手の心をがっちりと掴んで放さなかった名機。そこに新たな告知方法が加わったのでは、「せっかくのリールフラッシュが死んでしまうのでは?」と危惧したのだ。また、鉢巻リール作動中は一種のフリーズ状態になることは、1ゲームでも多く回したいというプロタイプの人には不要でしかなかった。加えて、当時はまだ液晶搭載機などが出回る前で「演出はおまけ。演出を楽しみたければパチスロではなくパチンコを打て!」というような意識も根強くあったことも付記しておこう。

 だが、この鉢巻リールがなかったら、ここまでの大ヒットにはならなかったのではないかと筆者は考えている。確かに、ボーナスの可能性がほとんどない状態で鉢巻リールが回転しているときは邪魔に感じるのは致し方ない。「おもちゃ」と揶揄する人の気持ちもわかる。けれども、このおもちゃこそが、ライトユーザーや初心者にも受け入れられた1つの要素だったのではないだろうか。ボーナスが確定した喜びにじっくり浸れるこの機能は、初級者が一喜一憂しながらパチスロのおもしろさを徐々に覚えていくにはぴったりだった。更に、当時としては最大級の面積を誇る巨大な「大当り」の文字が表示されれば、誰も悪い気はしなかっただろう。
 それに、もし毎ゲーム作動していたら邪魔で邪魔で仕方がなかったろうが、作動率は約9分の1という多すぎもせず、少なすぎもしない絶妙な確率であった。おかげで鉢巻リール作動時の期待感は損なわれず、「テローン」という予告音が鳴れば、外見では冷静に振舞っても誰もが内心ではボーナスを期待せずにいられなかったものだ。また、告知が決して鉢巻リール偏向にならなかったことも大きい。リールフラッシュや出目からボーナスを察知することも多々あるばかりか、鉢巻リールとリールフラッシュや出目の矛盾で気づく場合など、出目・フラッシュ・音・鉢巻リールが絶妙なバランスで絡み合い、打てば打つほど味が出る飽きの来ないゲーム性を完成させたのだ。そう、本機がアルゼからの4thリール1号機ながら、すでに4thリールの完成形だったと言える。その証拠に、後のパチスロ業界では「4thリール搭載機は成功しない」という格言がまことしやかに囁かれたが、それは『大花火』を超える出来の4thリール演出を作れなかったことに起因しているように思える。液晶非搭載機ながら、それほど演出が面白かったのである。もしかすると、『大花火』のヒットがなければ、その後の演出ブームが起こるのも遅れたのではないかと疑いたくなるほどである。
 とは言え、いくら演出が面白くとも、もし『大花火』がもっと難しい台なら、ライトユーザーたちはすぐに離れていったに違いない。『ビーマックス』が玄人受けした反面、ビタ押しが得意でない人々には近寄りがたい存在になってしまったのは、目押しの難しさにあったのは明らか。それと同じ轍は踏めないと考えたはずだ。だが、もしリプレイハズシのコマ数を増やしたのでは、簡単すぎて今度はお店側が扱いづらくなる。きっとそんな思惑で採用されたのが、リール制御によるアシストハズシなのだろう。成功率75%ながら、ハズシのコマ数は12コマと目押しの難易度は非常に簡単。そのため初級者でも誰でも攻略気分を味わうことができたのだ。
 このアシストハズシの恩恵を受けたのは初級者のみではない。一見すると上級者には全くの無関係に思えるかもしれないが、実は間接的には一番恩恵を享受していたのは彼らだとも言える。と言うのも、ハズシ成功率が75%では機械割が約2%下がるため、イメージほど「勝てる機種」ではなくなる。そんな初級者が多く打つことでホール側は設定を入れやすくなり、その結果、上級者が高設定にありつける機会が増えたからだ。もし、ハズシがビタハズシしかなければ、打つのはほぼ上級者のみとなり高設定を入れにくくなっていたとは考えられないだろうか。
ビタハズシは左リールに17番のBARを目押しすれば100%JACイン回避できる。
アシストハズシは3連ドンちゃん付近を狙えば、リール制御によって75%の確率でJACインを回避できる。
パチスロ界に起こした革命の数々
 こうしてライトユーザーからスロプロまで、幅広い層から支持を受けた『大花火』はさらに設置を増やし、当時の歴代2位となる約20万台という設置台数を記録することになる。この記録は後に数台の名機に抜かれることとなるが、『大花火』が登場した当時はまだパチスロブームの初期段階で総台数が今ほどなく、単純にその後に登場した機種の台数とは比較できない部分があることを留意していただきたい。いや、むしろ『大花火』が存在しなければパチスロがブームになることがなかったかもしれない。その説が正しいかどうかは定かではないが、少なくとも業界全体に多大な影響を与えたのは間違いない。その例をいくつか挙げていこう。

 たとえばホールの営業方法だ。『大花火』の設定6と言えば、機械割140%という破格の甘さを誇り、普段なら滅多に使えない設定なのだが、これがイベントを行なえば徹夜で行列が出来ることも珍しくないほど格好の客寄せとなった。仮に1台以外は全台低設定だとしても無イベント店に比べればはるかに集客することができたため、多くの店が頻繁にイベントを行なうようになっていき、店舗間のイベント競争が激化することとなった。イベント内容も朝イチの並びだけで決まらぬよう「●回目のBIGを最初に引いたら設定6」「711枚獲得で設定6」など様々な工夫がなされ、イベントが多様化していく傾向が見られた。これを機にイベント主体の営業スタイルが確立されたホールも多数存在したのだ。
 また、当時の換金率は、地域差はあるものの7〜8枚の非等価交換が主流で、等価交換はおろか6枚交換すら多くない状況だったのだが、多くの打ち手は『大花火』のような初期投資が嵩む可能性がある機種は交換率の高い店で打つ傾向が見られた。非等価交換であれば差枚数が0枚程度であれば換金率の差で負けるという換金率ギャップのリスクがあり、大勝ちした時に「これが等価交換だったなら…」と非常に損をした気分になるのだからそれも当然か。斯く言う筆者も「どうせ負け額は一緒であるなら打つときは等価交換で…」と考え、推定平均設定1.2くらいの等価交換店に通い詰めていた。今となっては設定の入っている7枚のお店のほうが賢かった気もするが、当時の人間の多くは同じように考えたため、低換金率のお店が苦戦する傾向にあった。その結果、等価交換への変更や換金率を上げるホールが続出することとなったのだ。加えて、獲得枚数が表示されないタイプのデータランプを使用していたホールは、お客からの要望で替えるところもあり、『大花火』を打つ人々の熱気からパチスロブーム到来を予見してか、パチスロ専門店の出店やパチスロの設置比率を上げるホールが続出した。

 もちろん、打ち手や他メーカーにも大きな影響を与えている。前述したとおり、打ち手にハマリへの耐性が生まれたばかりか、ギャンブル性を求める傾向を強めた。その意識の変化がメーカーにも波及し、各メーカーは『大花火』を超える爆発力を秘めたマシン開発を目指すようになり、そしてそれが後の射幸心問題にも繋がっていったとも考えられる。また、その一方でエンターテインメント性…つまり演出に面白さを求める傾向を強めたとも言え、まさに新時代を切り開いた機種だったのだ。
 しかし、一番の影響は『大花火』によってなされたスロッターたちの目押し力の向上ではないだろうか。以前から名機たちによってリプレイハズシはすっかり浸透していたが、この時期にはすっかり目押しがうまいことがかっこいいという風潮が定着し、ホールは腕を競い合う場と化していた。そう、この時代のスロッターたちはパチスロにお金だけではなく、「プライド」も賭けていたと言っても過言ではない。

 遊技人口が多く、ビタハズシが存在する『大花火』のシマは特に最高の鉄火場と化し、いかにコインを1枚も無駄にせず、いかに1ゲームでも多く回して機械の性能をフルに引き出すか、そんな暗黙の勝負が毎日のように繰り広げられていた。「アシストハズシを使用するのは漢じゃない」というような意識があり、仮に万枚を出そうとも、周囲の人間は「それは実力じゃない」と決して認めなかった。それよりも仮にビタ押しが不得手だとしても、アシストハズシへと逃げずに勇敢に挑戦する姿の方が周囲は好感を抱いたし、推定設定2程度の台で毎ゲーム小役狙いを実践してボーナスを察知したら無駄なく即座に揃える。そして、ボーナス中はビタハズシで華麗にJACインを回避し、途中で大ハマリが訪れようとも、技術と粘りでコインと勝利をもぎ取る姿の方に感動を覚えていたのだ。その後に訪れた、立ち回りが最重要であったAT機・ST機時代を戦略や兵器の威力が重要となる近代戦争と例えるなら、差し詰めこの時代は刀一本を持って個々の技量で勝負する真剣勝負と言ったところだろう。
花火は散りゆけどもその遺伝子は次なる花火へ…
 このように、絶大な人気を誇りパチスロ界を席捲した『大花火』だが、いかに名機と言えども時代の流れだけには逆らえない。自身が数々の名機を過去のものにしてきたように、次々に進化していく新機種に自身も主役の座を追いやれていく。液晶搭載は当たり前となり、より爆発力を秘めたST機やAT機も登場してきた。それらの機種に出玉では負けないものの、連チャンは自力でするしかないため、一度状態に入れば大連チャンが約束されるAT機やST機に比べ、爽快感や期待感という点では敵わなかったのだ。また、豊富なパターンを可能にする液晶を搭載した機種に比べると、やはり4thリールとフラッシュだけでは単調に感じられたというのもあるだろう。決して大花火への気持ちがなくなったわけではないが、新しい機能にファンの気持ちは流れていってしまったのだ。そして、稼働が落ちればホール側は設定を落とさずにはいられず、それがさらなる稼働低下に繋がるというスパイラルを引き起こした。

 だからと言って大花火の評価が下がったというわけではない。その証拠に設定6を打てる権利を得た人は、波の荒いAT機やST機ではなく、高水準で安定した大花火を選択する人も少なくなかった。また、いつ打ち始めても、いつヤメても大丈夫という安心感があり、閉店1時間前からでも楽しむことができた。ただし、設置台数の多さからゴト行為が横行したということもあり、警戒したホールが撤去や減台という措置を取ったり、『大花火』と同様の大量獲得機である『デカドン』や『花火百景』にその席を譲ったりと、徐々に設置を減らすこととなったが、2006年のみなし機撤去までホールで確かな存在感を示していた。

 パチスロ界に大きな花火を打ち上げたこの名機は、強烈な閃光を残してただ消えるだけでは終わらなかった。『ハナビ』から継がれたその火は脈々と次の機種へと継がれ、『ドンちゃん2』や『花火百景』と次の花火たちを打ち上げる火となった。そして、その火は脈々と次の機種へと継がれ、花火シリーズは2009年7月現在『緑ドン』まで累計9機種発表され、いずれも人気機種として活躍している。1つ1つの花火はやがて消え行くとしても我々の記憶に確かに残り、次々に打ち上げられる青・赤・緑…と、色とりどりの花火がまた魅了する。この遺伝子はこれからもずっとパチスロ界という名の夜空に美しく光り輝くに違いない。
<ハナビ>
<大花火>
<ハナビノオヤカタ>
<花火百景E>
花火シリーズは、1998年に登場した初代から、累計9種が登場。ゲーム性は各々異なるものの、フラッシュと機械割が甘いという伝統は引き継がれている。
<ドンちゃん2>
<デカドンちゃん2>
<青ドン>
<赤ドン>
<緑ドン>
10年経っても色褪せない名機の魅力に実戦で迫る!
 ここからは実戦にて振り返っていきましょう。

 今回訪れたお店は、立川駅から徒歩1分の場所に位置するスロット専門ゲームセンター「ドン・キーホーテ」さん。1号機の『ニューペガサス』から4号機まで、あらゆる名機が揃っているファンには堪らないお店です。『大花火』だけではなく、今回の記事中でご紹介したアルゼ系の機種も多数設置してありました。もちろん、全台設定6営業でしており、お得なイベントも多数開催しているので詳しくはHPをチェックしてみてください。

 さて、早速実戦を開始することわずか30ゲーム。レバーを叩くと

 「テローン」

 という懐かしい予告音から、第2停止で鉢巻リールが作動し、青ドンが停止。中・右リールを止めるとあっさり山がハズれてボーナス確定

 …のはずなんだけど、久しぶりすぎて確信が持てないため3枚掛けのまま3連ドンちゃんを狙っちゃいました。

 すると…
<スロット専門ゲームセンター『ドン・キーホーテ』>
立川駅北口から徒歩1分にある、パチスロ専門ゲームセンターの名店。1号機から4.7号機までの名機を全台設定6で営業中だ。様々なイベントが行なわれているが、中でも注目は毎月5日に行なわれる「誕生祭」。なんと2000円で名機が遊び放題になるぞ。詳しくはこちらのHPをチェックしよう。なお、パチスロ専門のゲームセンターは2階のみ。1階は甘デジ専門店としてホール営業しているので、途中にパチンコで遊びたくなった方は こちらに寄ってみよう。
 「ドーン!」という効果を相応しいスベリをみせて見事に降臨、そのままトリプルテンパイをさせて早くもBIG獲得です。

 展開が早くて喜ぶべきなんですが、正直早すぎて困惑。というのも、こちとらビタ押しを必要としないこのご時勢に甘え、すっかり腕がなまっていてビタでハズす自信まったくないから。
 でも、普段から編集部で「俺らが若い頃は大花火でビタハズシを決めて勝ちまくったもんだ」などと大見得を切っているだけに(実際の当時の成功率は78%)不甲斐ない結果は見せられない。必死にJACゲームで練習していると…


 できた!
 意外にも2度3度と繰り返し成功し、すっかり自信をつけていざ勝負。残り12ゲーム目に来た本日初のハズシ機会は見事に…
 JACイン…。

 しかも、1コマすべってこの目になった気がするのはきっと気のせいではない。幸先は悪いものの、とにもかくにも3回目のJACインが遅いのが幸いして579枚獲得となりました。
 しっかし、大花火の設定6ってやっぱりすごい。268ゲームでBIGを引いた後は、75ゲーム、44ゲーム、22ゲームと2桁のゲーム数で連チャンし、その後もハマらずにサクサク引きまくり。間延びが出るは、三連花火フラッシュが出るは…で、コインは増える一方。当時は設定6を入れないホールに「ボッタクリ!」とか思ってたけど、「うんこれは置けないわ」と納得せずにはいられませんでした。

 さて、だらだら実戦内容を書いていっても仕方がないので、ここで懐かしの鉢巻リールのアクションを簡単におさらいしておきましょう。鉢巻リールは作動するタイミングで以下のように対応役が異なります。

・レバー操作時に作動するパターンは4種類。いずれの場合も作動した時点でハズレorボーナスとなるので、小役狙いは不要です。右に向かって回り始めればその時点でBIG確定となります。

・第1リール停止時に作動すれば小役の可能性が大。一尺玉停止以外は小役ハズレでボーナス確定となります。回転方向が右なら必ず赤or青のドンちゃんが一旦停止してから再始動して一尺玉が停止しますが、この場合ハズレはないので小役を否定した時点でボーナス確定です。

・第2リール停止時に作動した場合は基本的には第1リール停止時と同じですが、ボーナス期待度がややアップします。

・そして、予告音が鳴って第3リール停止まで鉢巻リールが動かなければ大チャンス。その際は、必ず赤or青のドンちゃんが停止してアクションが展開されます。基本的にハズレor6枚役orボーナスですが、左回転で青ドン、右回転で赤ドンが停止すればその時点でボーナス確定です。他にも、「青→青」「赤→赤」とドンちゃんが停止した時点でボーナス確定となります。ただし、その後に停止するドンちゃんの色で命運が分かれ、前の2回と同色のドンちゃんなら嬉しいBIG確定で、前の2回と異色のドンちゃんだと残念ながらREG確定となってしまうので注意。
 さて、話を実戦に戻して、その後のリプレイハズシの調子を報告させていただくと、当時にもほとんどなかったくらい絶好調で15回連続成功! 基本的に失敗するときは早く押しすぎちゃう傾向があるけど、本日はBARを「置いてくる」(同じ傾向を持つ人はこのニュアンスをわかってくれるはず)のがうまくいき、おまけに当時2回しかできなかった、こんな711枚まで出して。
 あの頃と違って、リプレイがテンパってもガン見して変なプレッシャーをかけてくるやつはいないし、何よりも失敗してもお金が損しないことが大きい。 やっぱりプレッシャーが原因だったんだなって再認識しちゃいました。

 というか、あれは実はアシストハズシの存在もビタ押しを失敗に導いていたんじゃないかとも思ってます。よく、どんな草食動物でも追い込まれると牙を剥いて立ち向かうしかなくなるけれど、逃げ道を見せれば愚かにも無防備な背を向けて逃げ出し簡単に狩れると言われる…それと同様で、もしアシストハズシという逃げ道さえなければ、開き直って全力でビタ押しに挑戦できたんだけど、アシストハズシの存在があるために押す寸前に…

 「え、ビタで狙っていいの? どうせ、成功率78%くらいだろ? 失敗するかもよ。それよりも3連ドン狙えばアシスト発生するんじゃね?」
 「え、でも、25%でJACインしちゃうし、日和っているみたいで格好悪いし…」

 なんていう葛藤が生まれ、結果思い切りが悪くなって失敗…。皆様もそんな感じだったのでは?
 で、今日は余裕とか思ってたら、右の写真のような緊迫感ある状況が発生。

 そう、なんとドンちゃんが3球勝負を挑んできたのです。この状況で失敗はできない…とか思ったら途端に肩とかに力が入って、呼吸もうまくできなく…。
 もう、全然ハズせる気がしない。やっぱりプレッシャーって凄い。

 ここは何とか「押そう」「でも押せない」「でも押さなきゃ」という葛藤が20秒くらい続いて、ようやくヤケクソで「フン!」と押すと、運良く成功したものの、そんな精神状態になったら最後。残り21ゲームで再び引いたJACインは、見事に失敗で獲得枚数はたった456枚。久々にビタハズシの恐ろしさを体感させていただきました。

 本当はこの10回目のBIGまでと決めていたのだが、失敗したまま終わるのでは納得いかないので急遽続行するも、次に引いたBIGは3回目のJACインが残り7ゲームとハズシの機会なし。さらにハマってREGで終了と、またも不完全燃焼な形で実戦終了と相成りました。
 久々の実戦の感想は、さすがは『大花火』と言ったところ。今の液晶機に比べれば演出パターンは遥かにシンプルなのに、バランスが良くて素直に面白い。もし、5号機でこの演出を搭載している機種が登場したらきっと人気機種になるでしょう。

 そして、何よりもリプレイハズシ。ストップボタンを押すときのドキドキ感、成功したときの達成感、こんなヒリヒリしたのは本当に久々です。確かに、現行の機種やパチンコでも「頼む!」と祈りながらレバーやボタンを叩くアツい瞬間はあります。しかも、成功したら思わずガッツポーズしちゃうくらいのね。でも、それはすでに決まっていることの結果を知るだけの作業だったり、とても狙えるものではない実質的には運勝負だったり…と、この『大花火』のビタハズシのように成功も失敗も全て自分の力で決まるわけではないから、どこか真剣にはなりきれていなくはないでしょうか?

 成功するも失敗するも、全てが己の腕次第。こんなヒリヒリする真剣勝負をできる『大花火』のような名機がまた登場してほしいものです。
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